しあわせの甘い宝石
スイーツ選びって、なんであんなにわくわくするんだろう。
ショーケースに並ぶ、色とりどりのケーキ。
季節を運ぶ果物、思わずうっとりするデコレーション。
私たちは、あれこれと迷いながら、
早くもしあわせな気持ちで満たされていく。
You are what you buy.(なにを買うかで、あなたが決まる)
今日は、素敵なスイーツを買って帰ろう。
ほら、そのひとくちで、どんな気分が訪れた?

Special Issue Life With Sweets パティスリィ ボン・クーフゥ/シェフパティシエ 岩柳 麻子さんが語る、スイーツと過ごすひととき

「今」を感じて、心に響くケーキを。

「今、お客様は何を食べたいんだろう?」
私は、ケーキを作るときにこのことを一番大切にしています。だから、気候によって味を変えることもあるんです。今年の夏はすごく暑かったけどすぐに涼しくなったから、みずみずしい素材よりほっとする味にしようかな、とか。年に2回、お店で春夏・秋冬コレクションと称したイベントを開いて、常連のお客様に新作ケーキを食べていただくんです。ここでの感想を参考に調整して店頭に並べますが、気候の変化によって店頭に出した後にも小さなアレンジをします。口にした瞬間、「あ、今食べたかったのはこんな味!」って感じてもらえたらいいなぁって、いつも考えています。
パリでは、名もないケーキ屋がすごくおいしかったりするんですよ。遠くまで買いに行かず、家の近くでお気に入りのお店を探して常連になるんです。日本人が近所でお米を買うように、スイーツももっと身近で楽しんでもらえたらって思います。

素材・色・食感の組み合わせを楽しむ。

学生時代は、デザイン系の勉強をしていました。畑違いと思うかもしれませんが、実はケーキ作りと似ているんです。どうしたら果物やクリームのきれいな色を生かせるんだろう、とか、しっとり感とサクサク感、甘さとほろ苦さのような、まったく別の食感や味を組み合わせたら新鮮かな、とか。食べるお客様の姿を想像しながら作るのって、本当にわくわくするんです。
お店はコンクリートや鉄を使った無機質な空間で、普通のケーキ屋のような明るくてかわいいイメージとは違います。ケーキの色や輝きを引き立てるためには内装をシックにしようと、仲間と考えた演出です。ケーキがすべて四角なのも、テイクアウトの箱を開けた瞬間、いろんな種類が一列にピシッと並び、それぞれ違うデコレーションや色が、まるでひとつのケーキのように見える驚きを楽しんでほしいから。丸や三角のケーキがバラバラ入っているより、素敵なサプライズの一瞬だと思うんです。

スイーツで満たされる「しあわせ感」。

スイーツって、口に入れると甘さがふわっと広がってうっとりするのに、甘さで目が覚めるような気もしませんか?そのなんともいえない味わいが、魅力なんだと思います。小さな塊の中に色・味・食感など素敵なものがいっぱい詰まってる。食べなくても生きていけるけど、なければ、見て心がときめいたり、おいしさに感激するような「しあわせの感受性とセンス」がしぼんでいく気がします。だから、日常のスイーツの時間を大切にしてほしい。テーブルクロスを使うだけで雰囲気はガラリと変わるし、エレガントな食器を選べば優雅な気分でいただけます。そして、ぜひ、浸れるような音楽を。オペラなんか意外と合うんですよ。映画の主人公気分が味わえて、なんだか力がわいてくるんです。
感受性が豊かな人って、魅力的ですよね。きっと服にもこだわるし、衣食住のバランスもいいはず。スイーツは、しあわせな気持ちを補給してくれる素敵な宝石なんだと思います。